葉酸普及研究会

神経管閉鎖障害とは

神経管閉鎖障害はどんな病気?

先天性疾患
 神経管閉鎖障害(しんけいかん へいさしょうがい)は、先天奇形の1つで、二分脊椎と無脳症から構成されます。赤ちゃんの脊髄神経を収納する神経管は妊娠6週頃(最終月経から6週後、または受精から4週後)に完成します。この神経管の形成が障害されると、脳神経と脊髄神経が正常に機能しなくなり、神経管閉鎖障害が発症します。二分脊椎の赤ちゃんは出生直後に背中の手術が必要となり、生涯にわたり医療介護が必要です。一方、無脳症児の赤ちゃんは自然流産するか妊娠中絶され、生存できません。
神経管閉鎖障害の病因と葉酸の有効性
 神経管閉鎖障害は、葉酸不足、発熱、肥満、抗てんかん薬の摂取、母親の(未治療の)糖尿病、遺伝因子などを含めた多因子が、複合的に作用して発症します。従って葉酸サプリメントを適切に摂取しても、残念ながら全例を予防することは出来ません。英国と中国の臨床研究によれば、葉酸を妊娠前から摂取すると40-80%の発症リスクを低くすることが出来ました。
神経管閉鎖障害の発生頻度
 発生数は病気を持った赤ちゃんの出生数+死産数(自然死産+人工死産)の和です。最近5年間の発生率は分娩(出生数+死産数)10,000件あたり平均8.42で、過去30年間減少傾向を認めません。2018年に発症した神経管閉鎖障害の赤ちゃんの内58%は無脳症で、残る42%は二分脊椎でした。これら赤ちゃんのうち人工妊娠中絶される割合は、無脳症が87%で二分脊椎は25%でした。
 厚生労働省の発表によれば2018年の分娩数(出生数+死産数)は938,014件であり、神経管閉鎖障害の発生率は分娩10,000件当たり7.93なので、744名の神経管閉鎖障害の胎児が発症したと推測されます。最終的に1歳の誕生日を迎えることが出来たのは、二分脊椎の235名と推測されます。
二分脊椎の臨床症状
 赤ちゃんが背中に瘤(こぶ)を持って生まれてきます。生後1-2日以内に、脳神経外科医による修復手術が必要です。80%の赤ちゃんは水頭症を合併しており、脳室と腹腔内をシャントチューブでつなぎます。幼児期になると、下肢の運動障害、股関節脱臼、脊椎側弯、脊椎後弯、褥創、尿失禁、尿路感染症、尿路結石、大便失禁などの治療が、青年期になると(男性)不妊症に対する治療が必要です。
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