1.神経管閉鎖障害(二分脊椎、無脳症)のリスク因子(原因)
二分脊椎の赤ちゃんを出産した母親360名と健常な赤ちゃんを出産した女性2333名の協力を得て、二分脊椎のリスク因子(病因)を調査しました。4つの因子が、リスクを増大させることが判明しました(オッズ比の値が高いほど、その発生リスク高くなります):
- 妊娠前から妊娠前期にかけて、葉酸サプリメントを内摂取しなかった(オッズ比2.5)
- 抗てんかん薬を葉酸サプリメントの併用無しで内服した(オッズ比20.2)
- 3親等以内に二分脊椎の患者がいる(オッズ比4.3)
- 赤ちゃんの生下時体重が2.5Kg以下であった(オッズ比4.2)
葉酸サプリメントを摂取していなかったのは、症例群360名中の325名(90%)でした。もし彼女らが葉酸サプリメントを摂取していたら、約50%(180名)の母親は健康な赤ちゃんを出産していたでしょう。抗てんかん薬を葉酸サプリメントなしで内服すると、その発生リスクは20.2倍へ上昇します。3親等内に二分脊椎患者がいる女性は(父母、兄弟、姉妹、祖父母、甥、姪、叔父、叔母)、遺伝子が関与している可能性が高いです。妊娠前に遺伝カウンセラーと相談してください。
- 厚生労働省からの情報提供
- 2000年に厚生省(現厚生労働省)は神経管閉鎖障害の発症リスクを低くするために、妊娠可能期の女性と妊娠を計画中の女性に、次の情報を提供した:1)妊娠1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月まで、栄養バランスの取れた食事と葉酸サプリメントを1日0.4mg (400マイクログラム)摂取すること。2)医師の管理下にある場合を除き、葉酸摂取量は1日あたり1mgを越えるべきでない。3)妊娠中の禁煙・禁酒は不可欠です。
2002年以降の「母子(親子)健康手帳」には、葉酸の重要性に関する記載が始まりました。しかし一般的に「母子(親子)健康手帳」が妊婦に手渡されるのは妊娠10-12週であり、やや遅すぎるようです。
- 医学会からの情報提供
- 日本産婦人科学会・日本産婦人科医会は2008年以降、次の情報を産婦人科医へ提供しています:1)葉酸サプリメントを1日0.4mg摂取すると、神経管閉鎖障害の発症リスクが低くなる。2)神経管閉鎖障害児を過去に妊娠した女性は、医師の管理下に1日4mgの葉酸錠を服用すると、その発症リスクが低くなる。
4つの医学会が葉酸サプリメントと神経管閉鎖障害に関する情報を、声明文として公表しています:1)2016年に日本先天異常学会、2)2018年に日本ビタミン学会、3)2020年に日本排尿機能学会、4)2021年に日本二分脊椎研究会が葉酸摂取の重要性を強調しました。